両親が離婚をしても、婚姻中と同様に、子は親に扶養を求める権利があること、また親には子を扶養する義務があることに変わりありません。したがって、経済力がありかつ子を監護養育しない親は、子を監護養育する親に「養育費」を支払って子を扶養することになります。
「養育費」ついての内容を具体的にいうと、衣食住の経費・教育費・医療費・最低限の文化費・娯楽費・交通費、子どものお小遣いや習い事、塾の費用なども含まれます。
母親が監護養育権者になる場合、通常は父親に養育費の支払義務が発生します。そうなると、養育費も慰謝料や財産分与と同様に、「夫から妻に対して支払われるもの」または「妻として請求権がある」と理解されがちですが、実際は違います。
養育費は、この場合では「父親から子に支払われるもの」です。母親が養育費の額や支払い方法を話合うのは、子の(法定)代理人として、子の代わりに子の父親と交渉していると考えるのです。
こうしたことから、通常は、養育費の支払は子ども名義の金融機関口座を作り、そこに振込みをさせることになります。
養育費の額は、夫婦の収入や財産、これまで子どもにかけてきた養育費の実績、これからの見通しなどを考慮して、まず夫婦の話合いで決めることを試みます。
扶養の本質は「生活保持義務」、つまり”親と同じレベルの生活の保証”とされています。父親は自分の生活を切り詰めてでも、子どもの養育費を支払うように努めなければなりません。
養育費の金額を決める場合には、養育費を払う人(通常は父親)と子を監護養育する人(通常は母親)が自営業者か給与所得者か、収入はいくらか、子供の人数と年齢などの点も考慮に入れることになります。
家庭裁判所の調停などで利用されている「養育費算定表」というものがあります。これがあればすぐに養育費の額を調べることができます。
ただ、この「養育費算定表」は標準的なケース(同居していた夫婦が別居し、夫婦の一方が子を監護しており、子が学齢期であれば公立学校に通う)を想定しているため、現実には算定表を修正すべき事情を伴うことが大半です。
離婚後、子どもの児童手当を私が受け取ることになりますが、これは私の収入になるのでしょうか?
養育費を請求し、受け取る側(権利者)が児童手当や児童扶養手当の公的扶助を受けている場合、「私的扶助が受けられない世帯に対する補充的な公的扶助であって養育費分担義務を低減されるものとして考慮する(権利者の基礎収入に加算する)ことについては疑問があるので、加算しない」とされています。ですから、ご自身の収入に含める必要はありません。
養育費の額が夫婦間の話合いで決まらないときは、家庭裁判所に「調停」を申立てて、養育費の額や支払期間について話し合いをします。
また、養育費の額は、養育費の額を決めたときにまったく予測できなかったような社会事情の変動が、当事者の責めに帰することのできない事情により生じ、しかもそれが重大であるときには、将来に向けて養育費の額の変更を求めることが認められています。これを民法では事情変更の原則といいます。
事情変更により養育費の金額が変更される始期については、法律に定めはなく、一般
には、相手に増額や減額を申し入れた時点から始まります。ですから事情変更にあた
る事由が発生したときは、速やかに相手方へ連絡するのが良いでしょう。
養育費の額の変更を希望する場合は、まず子の父親と母親で話合いをして、それで決まらないときには家庭裁判所で調停をすることになります。
養育費は、子どもが精神的・経済的に自立して、社会人として生活できるようになるまで支払うものとされています。単に「成人になるまで支払えばよい」と決められているわけではありません。
支払期間は父母の学歴などの家庭環境、資力により個別に定めることが出来ます。
したがって、最近は、大学などに進学する子どもが多いことから、養育費の支払の終期を「大学などを卒業するまで」とする事が増えています。
養育費は、性質上、長期間に渡り定期的に支払うべきものとされていて、実際にもほとんどが毎月払いとされ、一括払いというのは非常にまれです。通常の支払方法は、金融機関に子どもの名義で口座を開き、そこへ定期的に振込んでもらうように取決めをします。
養育費などのように、支払が長期間に及ぶものは、時間が経つに連れて支払いが遅れがちになったり、支払いがされなくなったりします。特に、離婚の特徴から、「離れて暮らす子に対する愛情、扶養の義務感が薄れてきた」「再婚して新しい家庭にお金がかかり、養育費に手が回らない」という理由から、養育費は遅れがちになりやすいのです。
実際に離婚した後に子どもを妻が育てているケースでは、養育費を受け取っているのは全体の3割程度といわれています。
慰謝料の取決めは、口約束ではなく、必ず書面に残しておきましょう。できれば、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、さらに安心です。
強制執行認諾文言付きの公正証書は、金銭的な取決めについては調停や裁判の判決と同じ効力を持ちます。つまり、もし支払がストップしたときには、相手方の給料などを差し押さえをすることで支払を受けることができます。
執行認諾文言付きの公正証書を作ることは、支払がストップされたときのための保険という効果があるだけではなく、相手方に支払を遅れさせないというプレッシャーをかけるという意味でも、非常に効果的です。
平成16年4月施行の民事執行法により、養育費については一旦支払いが遅れると、その遅れている分だけではなく、まだ支払期限が来ていない将来分の養育費も差し押さえができるようになりました。
また、給料の4分の1しか認められなかった差し押さえが、養育費に限っては2分の1まで差し押さえができるようになりました(給与が33万円を超える部分は全額差し押さえが可能)。
たとえば毎月4万円の養育費を子供が20歳になるまで支払うという事例で考えてみます。
最初はきちんと支払われていたが、1年間(48万円)滞ったので差し押さえに踏み切ったとします。差し押さえて時点で、子どもが20歳になるまでの将来分の残高が240万円(5年分)あった場合は、過去の滞納分(48万円)+将来分(240万円)の合計288万円を同時に差し押さえすることができます。
谷 雅史行政書士・社会保険労務士事務所
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