離婚するときには、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を分け合います。不動産や車、預貯金などが夫の名義になっていても、それが婚姻期間中に買ったり増えたりした財産であれば、名義に関係なく夫婦の共有財産と考え、財産分与の対象になります。
相手方が給料や預貯金をすべて管理している、財産を隠している、へそくりをしている疑いがあるときは、どこにどれだけの財産があるのかあらかじめ調べておきましょう。
ただし、結婚前に貯めていたお金、実家から持ってきた家具、親から相続した財産などは、その持ち主の固有の財産になるので、財産分与の対象にはなりません。
結婚前から各自が所有していたもの(結婚前からの貯金や嫁入り道具も含む)。結婚中に一方が相続したり,贈与を受けたもの。結婚後に購入したものでも,各自の衣類や装身具など各自の専用品と見られるもの。
結婚後に夫婦の合意で共有とし,共有名義で取得した財産,共同生活に必要な家財道具など。
離婚時は、共有名義の不動産は一方が他方の持ち分を買い取るなり,売却して代金を分けるなりの分割をすることになります。
結婚後に夫婦が協力して購入した土地,建物,預貯金などで,夫婦の一方の名義になっているもの。
名義こそ一方のものであっても,実質的には夫婦の共有財産なので,財産分与の対象です。
また、夫婦が共働きで生活に必要な費用を収入などに応じて分担し、それ以外の収入はそれぞれの固有の財産であることを夫婦間で事前に取り決めがされている場合や、明確な取り決めがなくても、財産分与時に互いがこれと同じような認識を有していた場合は、財産分与の対象にならないと考えられます。
財産の分け方や割合は、夫婦の話合いで自由に決めることができます。とはいえ、お互いに少しでも多くもらいたいので、話合いがつかないケースがよくあります。
どうしても合意できない時は、家庭裁判所に調停を申立てて、その中で財産分与について話し合いをします。
家事労働のみに従事してきた専業主婦が財産分与を受ける割合は、以前は3〜4割とされることが多かったのですが(つまり、夫婦の財産形成に対する妻の貢献度が低く評価されていた)、最近の判例では、特段の事情がない限り夫婦の財産形成に関する貢献度は等しいとする、いわゆる「2分の1ルール」が提唱されています。
実際に、最近の家庭裁判所の調停では、この2分の1ルールを採用しているようです。
上でいう「特段の事情」とは、医者や弁護士など専門的な仕事に就いていて一般的な家庭よりも収入が多い、または非常に危険な仕事に就いているためにその手当てが支給されているので収入が多いなどの事情が典型です。
また逆に、妻が家事労働に加えて農業などの自営の家業に協力したり、夫婦共同で事業を経営して夫婦の財産形成により貢献している場合は、それに応じて分与の割合が高くなった裁判例もあります。
共働き夫婦の場合は、婚姻期間中に蓄えた財産に対して、夫または妻の貢献がどの程度であったかによって財産分与の割合が決まりますが、妻がフルタイムで働いているときは、夫と収入能力に著しい差がない限りは、貢献度は夫と平等と考えてよいでしょう。
離婚時の財産分与で、夫婦の同意があればいくらでも分与してよい、というわけではありません。
例えば、夫に借金がある場合、妻が全財産を財産分与としてもらってしまうと夫は一文無しになり、夫にお金を貸している債権者は回収ができなくなり、著しく不公平になります。
このように、財産分与の額が不相当と認められる程度に過大な場合は、債権者から財産分与の取消しを求められる可能性があります。
離婚によって財産分与を受ける者に対する課税については、これらの財産の給付は、財産分与請求権(民法768条)に基づいて給付されるものであり、贈与によって取得するものではないので贈与税の課税対象ではないとの考え方です。
しかしこれを悪用し、例えば、妻に無税で財産を譲るために離婚し、財産分与した後、すぐに再度結婚するといったような事例は贈与とみなされ、贈与税の対象となります。
このような税務上の判断は、ここの事例ごとに判断されることになりますので、十分に留意しておくことが必要です。
「とりあえず離婚をして、それ以外のことは今後決めよう」と相手方に説得されて、慰謝料や財産分与についてきちんと決めずに離婚してしまうのは、非常に危険です。
離婚を考えるとお互い顔も見たくなくなり、とりあえず離婚を先にと考えるのはお気持ちは分かりますが、ここは我慢して話し合いを継続してください。
法的に言えば財産分与の請求ができるのは離婚後2年以内ですので、必ずしも離婚と同時に決める必要はありません。しかし、離婚後に新しい生活と仕事に慣れることに精一杯で、気がついたら離婚から2年経過していた、財産を隠されてしまった、財産分与の話合いをしようと思ったら別れた夫と連絡が取れなくなった、というケースも少なくないようです。
出来る限り離婚の話し合いのときに、慰謝料や財産分与ついても決めておきましょう。
財産分与についての取決めは、口約束ではなく、必ず書面に残しておきましょう。出来れば、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、さらに安心です。
強制執行認諾文言付きの公正証書は、金銭的な取決めについては調停や裁判の判決と同じ効力を持ちます。つまり、もし支払がストップしたときには、相手方の給料などを差し押さえをすることで支払を受けることができます。
執行認諾文言付きの公正証書を作ることは、支払がストップされたときのための保険という効果があるだけではなく、相手方に支払を遅れさせないというプレッシャーをかけるという意味でも、非常に効果的です。
財産分与には、先に述べた財産分与が清算的な財産分与(婚姻中に築いた財産は、離婚の際に清算しましょうという財産分与)と呼ばれるのに対し、扶養的な財産分与という考え方があります。
扶養的な財産分与というのは、夫婦は離婚すると赤の他人になって扶養の義務はなくなるけれど、離婚後の夫婦に経済的な格差が生じてしまう場合に、別れた配偶者(通常は妻)が離婚後、自立した生活ができるようになるまでの一定期間、もう一方の配偶者(通常は夫)が経済的にサポートするという目的で、清算的な財産分与とは別の目的で支給されるものです。
「自立した生活ができるようになるまでの一定期間」とは、もっと具体的にいうと、引越し費用や仕事が決まるまでの期間の生活費という形で、夫から妻に支給されることが多いです。
ただし、離婚時に十分な額の(清算的な)財産分与をもらった場合には、その金銭の中から生活費などを支出できるので、扶養的な財産分与をもらうことが難しいケースもあります。
扶養的な財産分与の額と支給の期間は、夫婦の話合いで決めることができますが、話合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
谷 雅史行政書士・社会保険労務士事務所
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